絵本の読み聞かせは、揺るがぬ国語力の基礎をつくる

AI時代に期待される絵本の読み聞かせと国語

刻々近づきつつあるAI時代に、私たち大人は未来を担う子供たちにどんな力をつけさせたらよいでしょうか。身近に手に入れることができるたくさんの便利なものと引き換えに、これまでの多くの仕事が失われていくことになります。これからの時代は、AIが担うことのできないクリエイティブな能力によって未来を築くことが求められます。そのクリエイティブな力の土台は、何によってつくられるのでしょうか。それこそが、まさに幼少期の絵本の読み聞かせです。これまでも、絵本の読み聞かせは、子供の豊かな感性を育み、想像性を広げるといったことは知られていました。また、日々の親子の愛情を育むものとして、大切にされてきた時間でもあります。良きものとして伝えられる絵本の読み聞かせは、AIの及ばぬ能力の育成を担うものです。クリエイティブな絵本の世界は、プログラミングされたAIの翻訳では及ばない豊かな言語の宝庫です。それは、学習においては国語の力の基礎となるものです。絵本の読み聞かせから、どのようにして国語の力の基礎がつくられるのか。読解力、語彙力などについて一つひとつ検証していきます。

国語の語彙力 0,1歳の絵本の読み聞かせ

絵本がAI翻訳の及ばぬ豊かな言語の基礎であることを先ほど申し上げました。絵本のなかで、この語彙力はどのようにして育まれるのでしょうか。乳児期のまだ字の読めない子供たちは、絵本の中で繰り返される言葉を母親の声を通して捉えます。それらの多くは、擬声語や擬態語などの単純化された言葉です。乳児期の子供はそれらを身体感覚として自分の中に吸収していきます。国語の語彙力の獲得のはじまりは、こうした絵本の読み聞かせの繰り返しから始まるのです。この時期に乳児の身体に取り込まれるのは、母親の音声を通した言語であり、そこには母親の感情、子に対する愛情が根底にあります。国語の力の基礎となる言葉の獲得は、愛情を通じた音としての言葉を身体に吸収していくことだともいえます。それは、母親との身近な関係からなるコミュニケーションのはじまりでもあります。国語の語彙力は、母親との愛情を基にしたコミュニケーションとしての音声言語が土台にあるのだといえます。

国語の語彙力 2,3歳の絵本の読み聞かせ

乳児期に身体に吸収された言葉は、幼児期になるとさらに発達し、国語の力の土台が築かれます。とりわけ2歳期には、爆発的にあふれる出るように言語能力が発達します。音声として身体で捉えた絵本の言葉を子供は、身体的表現として表そうとするようになります。絵本の世界の中にとどまっていた言葉を、自分のものとして身体で表現しようとするのです。いわゆる模倣、ごっこ遊びに発展する過程として絵本の世界を現実の世界で表現し始めます。国語の語意の獲得は、身体的な発生、身振り、指差しなどの様ざまな表現を通して進行していきます。子供は、自ら絵本の世界の登場人物となりきって没入して表現することで、語彙を自分の中に取り込んでいくのです。自我が芽生え、イヤイヤ期ともいわれるこの時期の子供は、落ち着いて絵本の読み聞かせをすることができないようにも見え、心配になる親も多い頃ですが、注意深く観察してみると、子供は自らの身体で絵本の世界を楽しんでいるといったこともあります。国語の語彙力獲得の過程として、子供のその活動を見守ってみるとよいでしょう。

国語の語彙力 4,5歳の絵本の読み聞かせ

身体を使って絵本の世界を表現することを知った子供は、視覚、聴覚など五感を使って表現するようになります。絵本の世界を視覚、聴覚を通した言葉として表現することで、子供は絵本という言葉の世界の楽しみを知ります。そして、これまで親が先導していた絵本の読み聞かせを、積極的に楽しんでいこうとしていきます。子供は自ら絵本の世界に関わることで、言葉について感じ、考える時間をもつことになります。その中で、言葉は子供の中で色々なイメージと結びつきます。絵本の挿絵のイメージと結びついたり、現実世界の中の具体的な物と結びついたりしていきます。イメージと結びついた言葉が、さらに他のものと結びつくことで、子供は新しい言葉を知り、語彙力をつけていきます。国語の語彙力は、こうした言葉とイメージの結びつきにより発展していきます。

絵本の読み聞かせと小学生の国語の読解力

以前、子供の学力と親の経済力の相関関係が話題になりましが、それは絵本の読み聞かせと小学生の国語の力という面については、どのような関係があるのでしょうか。残念ながら、今のところエビデンスとなる調査はなく、文部科学省の学力調査とアンケートから推測するしかありません。しかしながら、「一日十分以上の読書をするか。」という質問に対して「はい」と肯定的な回答をした子供のほうが、国語の読解力の正答率が高いという結果が出ています。また、国語の正解率と保護者の学歴、保護者が子供に期待する学習姿勢、学歴などを比較してみると、子供の国語力と親の経済力には一定の相関関係があることがわかります。これらから推測できることとして、意識的に絵本の読み聞かせをすると、子供の国語力は高くなるということです。ここで、一つ提言したいことがあります。それは、読み聞かせは親の学歴に関係なく行うことができる。つまり、国語の力といういわば学力の総合的な土台をつくるのに親の学歴は必要なく可能だということです。

絵本の読み聞かせが国語力をつくる本当の理由

絵本の読み聞かせは、家庭で国語力を高める唯一の方法です。誰でも行うことができ、親の学歴や経済力にも関係なくできる実践的な方法です。もちろん、現実的な数値としての国語力に変換するには、コツや経験が必要ですが(当教室でお伝えしています。)、子供に国語力、学力をつけさせたい、学歴の下剋上を起こさせたいと思うならば、その願いを叶える実践的な方法であることは確かです。誰にでもできる絵本の読み聞かせが、なぜそれほどまでに効果的だというのでしょうか。それは、絵本の読み聞かせによって伝わる親の愛情が子供の自己肯定感を育てるという相乗効果にあります。国語力を高めるには、まず国語を好きになることが一番の近道です。好きこそものの上手なれ、と言いますが、その一歩として、まず自分を好きにならなければ始まりません。絵本の読み聞かせによって与えられる親からの無条件な愛情は、愛される存在として子供が自分を受け止め、自己肯定感を育てることにつながるのです。自己肯定感が高く、国語が好きな子供は、難しい読解の問題にも積極的に挑戦し、答えていきます。そうした過程こそが、国語力につながっているのです。

参考資料

https://synodos.jp/wp/wp-content/uploads/2014/09/4c9e45e04f00965ecb8934342678322d.pdf

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO81189520S4A221C1000000/

http://www.p.u-tokyo.ac.jp/lab/ichikawa/johoka/2008/Group3/yomikikase_eikyou5.html